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人生の最終段階における医療・ケアの指針
更新日
2021年5月7日 更新
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人生の最終段階における医療・ケアの指針
Ⅰ. 基本方針
人生の最終段階(終末期)を迎える患者とその家族と医療・ケアチームが最善の医療・ケアを作り上げていくため,患者・家族等に対し適切な説明と話し合いを行い,患者の意思と権利が尊重された医療・ケアを進めるものとする.
指針に当たり,厚生労働省:「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(平成30年度)」を規範とし策定する.
●
意思決定に関する枠組みの実施時期
阿部泰之:「コミュニケーションと意思決定支援」資料より,あさひかわ緩和ケア講座
Ⅱ. 人生の最終段階 (終末期) の考え方
1.終末期の定義
1) 患者が適切な治療を受けても回復の見込みがなく,最大の薬物治療でも治療困難な状態であり,かつ,死期が間近と判定された状態の期間である.
*期間とは,老衰を含め回復が期待されないと予測する生存期間.
≪ 2週間以内・ 1ヶ月以内・ 数か月・ 不明 ≫ 等を示す.
2.終末期の判断
1)
主治医と主治医以外の医師
が「その時点で行われている治療に加えて,更に行うべき治療法がなく,現在の治療を維持しても病気の回復が期待できない」と
判断が一致する
こと.
2) 患者が意識や判断力を失った場合を除き,患者・家族・医師・看護師等の
医療・ケア関
係者が納得できる
事.
3) 患者・家族・医師・看護師等の医療・ケア関係者が
患者の死を予測して対応を考える
事.
4)不可逆的な
全脳機能不全状態
.
5) 生命が新たに開始された人工的な装置に依存し,生命維持に必要な臓器の
機能不全が不
可逆的であり,移植などの代替手段もない
場合.
6) 悪性疾患や回復不能な疾患の末期であることが,積極的な治療の開始後に判明した場合の終末期の判断は,
主治医と主治医以外の複数の医師により客観的に判断
すること.
3.病悩期間
病気を自覚し,
悩み,
苦しむ期間とされ,
終末期と判断されるまでの期間.
出典 精選版 日本国語大辞典より一部引用.
Ⅲ. 延命措置への対応
1.延命処置
「延命処置」とは,生命維持処置を施すことによって短期間で死亡することは回避できないものの,それを行わない場合には即時に死亡することが必至の状態を防ぎ,生命の延長を図る処置・治療のことをいう.
2.終末期と判断した後の対応
1) 主治医は患者や家族・同意代行者に対して患者の状態が終末期であり,病状が予後不良であり治療を受けても救命の見込みが全くない状態であることを説明し,理解を得る.
2) リビング・ウイル⋆₁など有効な事前指示の有無を確認する.
3) 患者の意思を代弁又は,推測しうる者(同意代行者)の有無を確認の上,その家族や同意代行者の意思を確認する.
★1:リビング・ウィル(Living Will:事前指示)
個々の人の希望が医療に反映されるようにその意志を綴った文書.法的な拘束力はないが,より患者の願いに即した医療を行う手助けになる.「
人生の最終段階(終末期)を迎えたときの医療の選択について事前に意思表示しておく文書
」
★
2:
アドバンス・ディレクティブ
(
Advance directive)
ある患者,あるいは健常人が,将来自らが判断能力を失った際に自分に行われる
医療行為に対する意向を前もって意思表示すること.
★3:アドバンス・ケア・プランニング(
Advance care planning
:ACP)
今後の治療・療養について患者・家族と医療従. 事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス.
一般法人日本尊厳死協会ホームページ
より
3.本人又は家族や同意代行者が積極的な延命措置を希望した場合.
1) 本人の意思(リビング・ウイル)を確認し,それを尊重する.
2) 家族・同意代行者に「患者の状態が極めて重篤で,現時点で最良の治療を行っても救命が不可能である」旨を説明し家族・同意代行者の意思を確認する.
3) 当該治療が有益でなく不適切な場合(死期を早める,苦痛の長期化または増強させると判断される対応は行うべきでなく,医師はその旨を患者(家族)に十分説明し,理解を得るよう努める.上記を行っても引き続き積極的な対応を希望した場合は,その意思に従う.
4.本人又は家族や同意代行者が,延命措置を希望しない場合.
1) 本人の意思(リビング・ウイル)が存在し,家族や同意代行者が同意している場合はそれに従う.
2) 本人の意思が不明の場合は,家族や同意代行者が本人の意思や希望を忖度し,家族らの容認する範囲内で延命措置を実施しない.( *Ⅶ-5 に進む )
5.本人又は家族や同意代行者が,同意(合意)内容に変化を表明した場合.
1)同意(合意)に基づき,医療・ケアを実施するが,事実や状態の変化に応じて本人・家族や同意代行者の意思が変化する場合をふまえ,その都度,柔軟な姿勢で話し合いを繰り返し,更なる選択と意思決定を支援し,同意(合意),納得の元で医療・ケアを継続する.
Ⅳ. 終末期の判断や延命措置への対応に当たり考慮すべき事
1.
回復不能の判断や,患者や家族・同意代行者の意思が揺らぐなど,終末期の判断に困難
性がある場合は,病院倫理委員会(臨床倫理コンサルテーションチーム)に委ねる.
2.終末期の過程においては,患者本人は勿論,家族または同意代行者についても精神的,
社会的な支援を行う.
3.終末期の医療・ケアは,多職種からなる医療・ケアチームと本人,家族または同意代行
者の合意に基づき実施され,その過程は全て記録される.
4.意思決定や,医療処置 (蘇生処置を含む)に関する事は,全て診療録に記載し適切に対
応する.
Ⅴ. 同意代行者の定義・優先順
1. 患者が同意能力を欠く時に,患者の意思を推測し患者の希望を代弁できる「同意代行者」
は患者に対する医療行為につき同意権(以下「同意」)を代行する事が出来る.
2. 患者に意思能力がある場合は,同意代行者を選任する事が出来る.
3. 同意代行者は以下の順に従う.
1)配偶者(婚姻の届出をしないが,事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)
2) 成年の子
3)親
4) 兄弟姉妹
5)家庭裁判所の審査により医療行為の同意権限を付与された成年後見人.
※2)~4)が複数存在する時は,
①同順位者間の協議により同意者を1名定める.
②家庭裁判所が①を定める.該当者がいない場合は,四親等内の中から1名を定める.
Ⅵ. 医療・ケアチームの方針決定
1. 患者の意思が確認できる場合.
1) 患者の状態に応じた専門的な医学的検討を経て,医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明を行う.その上で本人と多職種の構成で結成される医療・ケアチームが本人の意思決定を基本とした,医療・ケアチームの方針を決定する.
2) 時間の経過,心身の状態変化,医学的評価の変更等に応じて,本人の意思が変化しうるものである事を考慮し,患者との充分な話し合いを行い意思決定の支援をする.
3) この過程の話し合い,意思決定については診療禄に記載する.
4) 患者の同意があれば,医学的な利益・不利益を医療・ケアチームによって検討がなされ,その結果を患者に説明した後,患者にとって最善の方針をとる.時間の経過,心身の状態の変化,医学的評価の変更等に応じて,家族または同意代行者に決定事項を伝え,家族または同意代行者への支援を行う.(医学的適応に準じており患者の意思表示が明確であれば,必ずしも家族・同意代理者の法的同意は必要ない.しかし,医師は職業倫理に則って可能な限り説明を行う義務があり,理解・同意を得る努力は不可欠とされている.)
2. 患者の意思が確認できない場合.
以下の手順で医療・ケアチームの中で慎重な判断を行う.
1) 家族,同意代行者が患者の意思を確認していた場合や推定できる場合には,その意思を尊重し,患者にとって最善の方針をとる.
2) 患者の意思が確認出来ない場合には,家族または同意代行者と十分に話し合い,患者にとって最善の方針をとる.時間の経過,心身の状態の変化,医学的評価の変更等に応じて,検討の過程を繰り返し行う.
3)治療方針に際し,家族または同意代行者,医療・ケアチームが判断困難な場合は,倫理委員会(臨床倫理コンサルテーションチーム)にて検討会を開催し,治療方針等について検討又は助言を得る.
3. 患者・家族への説明と同意を得る上で考慮すべきこと.
1) 家族とは,本人が信頼を寄せ,人生の最終段階の患者を支える存在であるという趣旨であり,法的な意味での親族関係のみを意味せず,より広い範囲の親しい友人も含み,複数人存在する事も考えられる.
2) 家族または同意代行者からは,患者のこれまでの人生観や価値観,信念,大事にしてきたことなど,どのような医療・ケアを望んでいたのか等の情報から,患者の意思を推測する.推測が困難な場合は,患者の最善の利益が何であるかについて,家族または同意代行者と医療・ケアチームが十分な話し合いを行う.
3) 家族または同意代行者が意思決定出来ず,医療・ケアチームに委ねる場合は,医療・ケアチームが医療・ケアの妥当性・適切性を判断して,患者にとって最善の医療・ケアを選択する.決定事項は,家族または同意代行者に内容を説明し,理解と合意を得る.
4) この過程における家族または同意代行者との話し合い,意思決定事項は,全て記録する.
5) 患者の意思に基づき指名された同意代行者が存在し,あらかじめ患者の希望事項が明確に意思表明されている場合には,不明な事項にのみ代行者が決定できるものとする.
6)非がん・がん・筋委縮性側索硬化症(ALS)等の慢性疾患における治療・ケア行為の詳細に関する実施の希望の有無については,①慢性疾患・非がん・がんの「私の事前指示書」(表1),②神経・筋疾患:
ALS等の
「私の事前指示書」(表2)により主治医が説明し,その後の意思決定内容(同意・非同意)の詳細について,本人・家族または同意代行者より署名をもらう.これらは,主に病悩期間におけるアドバンス・ケアプランイング(ACP)として扱う.
7)DNAR (do not attempt resuscitation),終末期の蘇生処置・延命などの治療行為の詳細に関する実施の希望の有無,判断の可否は,
急性終末期治療行為の「私の事前指示書」(表3)
>
により主治医が説明し,その後の意思決定内容(同意・非同意)の詳細について,本人・家族または同意代行者より署名をもらう.
8)生前の臓器移植提供や献体に関する本人の意思は,最大限尊重されるべきものであるが,院内における臓器移植・献体提供の安全性が確保されるまでは,主治医及び看護師長により個別に対応する.生前意思を把握した段階で主治医及び看護師長は,倫理委員会に報告する.
4.意思決定困難な状況への対応.
患者本人,家族メンバー,同意代行者,医師,看護師,多職種間における見解や価値観の相違,対立が生じており意思決定プロセスが複雑化している場合等,臨床倫理問題を専門に扱う臨床倫理コンサルテーションチームと共に検討し,助言や提案を得て調整を行う.
●本人にとって最善の医療ケアとは 本人にとっての最善の医療・ケアに関連する7項目
出典:西川満則氏提供資料(「ACP推進に関する提言」2019年
第1版一般社団法人日本老年医学会 倫理委員会「エンドオブライフに関する小委員会」より)
Ⅶ. 医療・ケアチームの体制
人生の最終段階における過程では,個々の死生観により死の受け入れ方が異なる事を踏まえ,患者自身又は看取る家族,同意代行者の思いも変化していくものであることを前提に,支援体制を整える.
1. 主治医により以下の説明を行い,それに基づいて患者や家族または同意代行者が医療・ケアチームと話し合を行い,患者の意思を汲んだ決定がなされる体制とする.
1) 予測される事態の説明.
2) 患者の意思を尊重した選択肢の提供.(治療,処置,食事,場所など)
3) 患者の意思を確認できる者の確認をする.(家族または同意代行者)
4) 医療処置(蘇生処置を含む)の選択,決定.
5) 医療・ケアチーム:患者・家族の治療・ケアに直接携わっている,もしくは関与している医師,看護師,および医療関係職種者.
6) 意思決定事項や検討過程を記録し,患者・家族または同意代行者に公開できるようにする.
2. 心肺蘇生法を実施しないこと(DNAR)の説明を行い,合意の得られた場合を対象とする. 【心肺蘇生法を実施しない事の判断】
は以下の3点を含む.
1)最善の治療にも関わらず病状の進行,又は老衰によって死が差し迫った状態である事.
2) 心肺停止した場合,仮に心肺蘇生をしても短期間で死を迎える推測される状態である事.
3) 患者及び家族または同意代行者により,心肺蘇生法は不要と意向が出されている事.
3. 看取りの場
として,自宅など病院以外の場所を希望するかを確認し,希望する場合は適切に対処する.
4. 患者や家族または同意代行者と医療・ケアチームとの合意を確認
しながら進め,医師による医学的見解,看護師によるケアとリスクについて具体的な説明を行う.その過程は記録する.
5. 医師の説明
1) 治療により病状の回復が見込めず,近い将来死を迎える状態である事.
2)侵襲的的処置は,本人の苦痛を高めるが,利益が極めて低い事.
3)積極的延命治療(心肺蘇生・気管内挿管)を控えるが,苦痛や症状緩和に最大限努める事.
4)浮腫を助長しない位の少量の輸液は,症状を緩和する可能性がある事.
5)医療・ケアチームで支援をする事.
6) 対応する職員は,患者の尊厳を尊重し関わること.
7) 精神的な安定のために,家族,同意代行者に協力を求める事.
8) いかなる時点においても,患者,家族,同意代行者が延命処置あるいは積極的治療を希望する場合は,それに従う事.その際には自宅などの看取りの可能性についても説明する.
9) 上記説明を受けた患者又は家族,同意代行者は,看取りの場所を選択する.当院での看取りを希望した場合は,その申し出を承諾する.自宅等を希望した場合は,訪問看護ステーションの利用など可能な限り希望に添う様に調整する.
Ⅷ. 体制と役割
病院長
・人生の最終段階における医療・ケア対応の総責任者
主治医
・治療及び本人,家族,同意代行者への説明責任者
・医療・ケアチームのカンファレンス参加
・死亡確認,死亡診断書等の関係書類の記載
看護部長
・看取り看護・ケアにおける看護,介護上の総責任者
・死生観,終末期医療,看護及び看取りケアに関する職員教育の監督
看護師長
・病棟での看取り看護・ケアに対する管理責任者
・看取り看護・ケアに関する現場教育
・家族等の相談窓口と対応に関する監督,指導
看護師
・看取り看護・ケアに必要な多職種協働における連携を推進する.
・看取り期における患者の状態観察の結果に応じた医師への報告と処置の実施.
・身体的,精神的緩和ケアと安楽な体位の調整し,褥瘡等のリスクを回避する.
・家族等への説明と,不安への対応.家族等の相談に対応する.ケアの指導.
・医療・ケアチームカンファレンスの企画と参加.
・安全な食事提供に伴う基準を遵守し,誤嚥等のリスクを回避する.
医療・ケアチームメンバー
・患者に深く関与する医師,看護師,および他職種.在宅支援担当者等も含む場合もある.
・医療職者が苦渋する臨床倫理的課題(患者診療・ケアにおける倫理・社会・心理・法的問題等)事例に関して,病院倫理委員会(臨床倫理コンサルテーションチーム)は検討会を開催し,助言や提案を行う.
Ⅸ. 職員教育
1.当院の人生の最終段階における医療・ケアの指針,内容の理解
2.死生観,倫理教育
3.夜間・急変時の対応
Ⅹ. 診療録・ケア記録等の記載にあたっては以下の事項を含める.
診療・ケアの経過について,以下の観点から記載する.患者穂人や家族・同意代行者等の同意については,「説明兼同意書(別紙)」に作成し,SCANし文書管理を行う.
1.医学的な観点から
1) 医学的な終末期であることの判断の根拠を記載する.
2) 上記を家族・同意代行者に説明した内容を記載する.
3)説明を受けた者の理解.納得の状況を観察し記載する.
2.意思確認の観点から
1) 患者本人の意思を確認し記載する.
患者本人の意思,またはリビィングウイルの有無
を診療禄に記載する.
・ 持参のリビング・ウイルは原本をコピーさせて頂く(常に最新の意思を確認する.) と共に,公文書としてSCANに残す.
・当院では,患者本人の意思,アドバンスまたはリビィングウイルの同意書として,
➀
慢性疾患・非がん・がんの「私の事前指示書」(表1),②
神経・筋疾患:ALS等の「私の事前指示書」
(表2),
③急性終末期治療行為の「私の事前指示書」
(表3)が作成できる.を活用し記載してもらい,原本をコピー(最新な意思)させて頂き,公文書としてSCANに残す.
・患者本人が口頭でのみ意思表明している場合は,その旨を診療禄に記載する.また,同時に患者本人の意向に対する家族・同意代行者の見解,意思決定内容について記載する.
・上記をふまえた意思について,本人及び家族・同意代行者に同意書を記載してもらう.
2) 患者が意思を表明出来ない場合,
家族または同意代行者による本人の推定意思の内容と,
その推定プロセス,
家族または同意代行者の意思を記載する.
3.延命措置の“希望なし”の観点から
1) 人生の最終段階にある患者の延命治療に関する希望の有無,判断の可否,意思決定プロセスは,
患者のPCカルテに記載
する.その同意や決定内容は,以下により状況に合わせ選択する.
➀
慢性疾患・
非がん・がんの
「私の事前指示書」(表1)
②
神経・筋疾患:
ALS
等の「私の事前指示書」(表2)
③急性終末期
治療行為の「私の事前指示書」(表3)
を以下のように作成する.
・基本的に病状・終末期の判断の根拠,治療の可否や選択肢等の医学的見解に関するインフォームドコンセントの詳細は,基本,PCカルテへ記載する.
・「私の事前指示書」には,以下の延命治療への選択と同意は,本人(最優先)の署名を得る.
・本人が口頭のみ,または意思表明困難な場合は,家族・同意代行者による患者の意思(推定)に基づく代理意思として選択がなされ署名を得る.
【主な心肺停止時の延命措置】
①心臓マッサージなどの心肺蘇生処置への希望の有無,判断可否
②気管挿管の希望の有無,判断の可否
③人工呼吸器の装着の希望の有無,半田の可否
【終末期における延命治療】
④気管切開の希望の有無,判断の可否
⑤昇圧剤の使用の希望の有無,判断の可否
⑥輸血・血液製剤の使用の希望の有無,判断の可否
⑦人工透析の実施の希望の有無,判断の可否
⑧鼻チューブによる栄養補給の希望の有無,判断の可否
⑨中心静脈栄養による栄養供給の希望の有無.判断の可否
⑩胃瘻による栄養供給の希望の有無,判断の可否
2)上記の選択肢の可能性とそれらの意義について検討していることを記載する.
3)患者にとって,最善の治療方針について検討事項を記載する.(法律・社会規範含む)
4)カンファレンスでの検討内容と参加者(医療・ケアメンバー)を記載する.
4. 状況の変化への対応
1) 状況の変化や対応の変更を記載する.
5.治療・ケアプロセス
1)臨床判断,経過,結果を記載する.
Ⅺ. 心肺蘇生法を希望しないことについて
1.癌の末期,老衰,救命の可能性がない場合,患者や家族,同意代行者の意思決定を受け心肺蘇生法を行わないこと(DNAR指示)を言う
【DNAR
: do not attempt resuscitation】尊厳死の概念に相通じるもので,
癌末期,老衰,救命の可能性が無い患者
などで,
本人又は家族の希望
で
心肺蘇生法(CPR)を行わない事と定義
されているが,患者の医療拒否権について明確な社会合意が形成されたとは言い難く,現在は蘇生に成功することがそう多くない中で蘇生の為の処置を試みない用語として
DNAR
が使用されている.
注:
家庭裁判所の審査を受けていない「成年後見人」には,患者の意思決定を委ねない.
2.DNAR指示を出すために必要な条件
1)DNARの指示を出すことが出来る
医学的基準(以下の2点)を患者が満たしていると,
主治医と主治医以外の医師の判断が一致
している事.
・適切な治療にもかかわらず,病状の進行によって死が差しせまった状態にある.
・心肺停止した場合,仮に心肺蘇生しても短期間で死を迎えると推測される.
2)看護師を含む,複数の当院スタッフによって指示の妥当性が確認されている事.
3)患者及び家族または同意代行者により,心肺蘇生法は不要と意向が出されている事.
3. 人生の最終段階‘(終末期)と判断され,今後の急変時に備えたDNARを含めたAD
(Advance Directive Resuscitation:事前指示)について
1)ADとは「患者あるいは健常人が,将来判断能力を失った際に自らに行われる医療行為に対する意向を,前もって口頭または書面で意思表示したもの」¹⁾)とされる.
・ADはその決定プロセスの在り方によって,本人の価値観や大切にしていることの共有がなされることなく表示されている場合があることの認識が必要である.
・ADによる実施率,利用率などの介入効果の実証は得られていない*ことからも⁾,患者のライフヒストリーの語り(ナラティブ)に基づく患者にとっての最善となるべく検討の過程として,ACP(Advance care planning )が必要²⁾とされつつある.
¹⁾The SUPPORT Principal Investingatore;JAMA,274(20),1591-1598,アメリカ,1995.
²⁾会田薫子;長寿時代の医療・ケア,筑摩書房,2019.
4.他院より終末期医療と判断されている場合
他院より終末期医療と判断されており,DNARの合意が得られている場合は,主治医により意思の再確認を行い,それに従う.
5.苦痛緩和
終末期の患者が望む場合は,可能な限り疼痛やその他の不快な症状を緩和し,患者,家族の精神的,社会的な援助も含めた総合的な医療及びケアを行うことが必要である.
6.安楽死や薬剤投与による死期を早めることについて
いかなる場合においても,積極的安楽死や自殺幇助等の死を目的とした行為は行ってはならない.薬物投与や筋弛緩薬投与などの医療行為により死期を早めることは行わない.
7.書式
患者(家族)及び医療者側は,必要に応じて,次の書式について必要事項を記入し,保存しなければならない.
8.今後の治療に関する意思決定確認書「事前指示書」
➀慢性疾患・非がん・がんの「私の事前指示書」(表1)
➁神経・心疾患:ALS等
の「私の事前指示書」(表2)
慢性疾患,がん,神経難病疾患,心不全等)における病悩期の治療に関する事前指示書
➂急性週末期
治療行為の「私の事前指示書」(表3)
蘇生処置および延命を目的とした治療に関する事前指示書
上記は,医療者による病状や終末期の判断,蘇生および延命処置や病状の進行に伴う治療行為の選択等の説明の際や,患者・家族による判断の可否と共に,意思や意向の確認・表明の際に使用できる.病院での同意書に法的効力はないが,生命倫理,臨床倫理の観点からも可能な限り同意書(本人または家族の代筆による署名)を交わすことが望ましい.
9.臨床倫理委員会・臨床倫理コンサルテーションチーム
主治医や各科医師あるいはその他当院職員が臨床倫理委員会の判断が必要と考える場合,あるいは家族からの意向がある場合には,委員長に同委員会の開催を依頼し,審議する.なお,現場では迅速な判断が必要な場合があるため,緊急の場合は書面会議あるいは緊急の場合は,委員長他,担当科長等の医師 2 名(助教以上)または多職種によるコンサルテーションチームの承認を経て代用することを可とする.
10.未成年(満 20 歳未満)の患者への対応
未成年の患者の終末期医療の方針を検討する際には,医師及び両親(又は親権を有する者)は,十分な話し合いを行って決定することが必要である.
両親(又は親権を有する者)は,未成年の子供の養育の義務を負う者として,子供の終末期医療の方針を決定する重い責任がある.
また,未成年の患者であっても,本人の理解力に応じて必要な説明を行うことは,医師の責務である.ただし,医師が未成年の患者の意思決定能力を判断する際には,十分慎重に行う必要がある.
11. 見直し
本指針は,あくまでも作成時点における本院の考え方に基づくものである.本指針は,救急医療や集中治療のように「時間」から「数日」の単位を基本的目安とした極めて死が間近に迫っている状態に加え,「数週」から「月」といった単位での人生の最終段階にある状態,更に,慢性疾患などの「年」単位での生命維持機能不全による死を免れない状態など,本院職員の対応に関する内容である.今後,社会情勢の変化なども鑑みながら適宜見直しを図るものとする.改定にあたっては,臨床倫理委員会における審議と承認を必要とする.
12.臓器移植,組織提供に関する意思確認
終末期医療においても,患者の臓器移植や組織提供の意思確認を行うことを考慮する.
臓器移植や組織提供の意思がある場合においては,本院の他の委員会とも連携をとり,対応を考慮することを優先し,短絡的に本指針に則った行動をとらないものとする.
Ⅻ.人生の最終段階における医療の方針決定支援フローチャート
上記のフローチャートは,厚生労働省:「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(平成30年度)」を基に本院の仕組みに沿って修正を加え.人生の最終段階を迎えた本人・家族等と医師をはじめとする医療・介護従事者が,最善の医療・ケアを作り上げるためのプロセスを示す.
●参考資料:終末期医療・ケアに関するガイドライン等
富山医科薬科大学(*注)終末期医療ガイドラインQ&A(*注)現・富山大学医学部
2014年 日本救急医学会・日本集中医学会・日本循環器学会の3学会による提言「救急・集中治療における終末期医療に関するガイドライン」
2018年3月 厚生労働省 人生の最終段階における医療の普及・啓発のあり方に関する検討会:「人生の最終段階における医療・ケアの普及・啓発のあり方に関する報告書」
日本医科大学「終末期医療に関する暫定指針」
2018年3月改訂版 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」
2018年3月改訂版 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン解説編」
2017年11月 日本医師会第XV次生命倫理懇談会答申「超高齢化社会と終末期医療」
日本医師会「グランドデザイン2009」-国民の幸せを支える医療であるために-各論(抜粋)」
2020年改定
日本透析医学会「透析の開始と継続に関する 意思決定プロセスについての提言」
2012年4月 日本小児科学会 倫理委員会小児終末期医療ガイドラインワーキンググループ 「重篤な疾患を持つ医療をめぐる話し合いのガイドライン」
2019年5月策定 日本クリティカルケア看護学会終末期ケア委員会 「救急・集中ケアにおける終末期看護プラクティスガイド」
平成24年6月策定 高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン「人工的水分・栄養補給の導入を中心として」社団法人日本老年医学会
富士吉田市立病院倫理委員会
改定 2021年4月1日
掲載内容に関するお問い合わせはこちら
医事課
medical
住所:403-0032 山梨県富士吉田市上吉田東七丁目11番1号
TEL:0555-22-4111
FAX:0555-22-6995
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